アスリートの最大心拍数は「220−年齢」じゃダメ。正しい測り方と実測値の活用法

記事内に広告が含まれています。

みなさん、自分の最大心拍数、どうやって決めてますか?多くのランニングアプリやウェアラブルデバイスが初期設定で「220−年齢」を表示しますよね。でも、これ、アスリートやトレーニングを積んだ人にはかなりズレるんです。実際、筆者が複数のランナーのデータを見ても、年齢式より実測値が10以上も高いケースはザラにあります。

結論から言います。アスリートの最大心拍数は、実際に追い込んで測る以外に正確な数値は得られません。 そして、一度測定した最大心拍数はトレーニングでほとんど変わりません。向上するのは“同じ心拍数でどれだけパワーを出せるか”という経済性のほうです。この記事では、GarminやCOROSといったデバイスメーカーの公式見解をもとに、正しい最大心拍数の考え方と、安全に実測するための具体的なプロトコルをまとめました。

アスリートの最大心拍数はなぜ「220−年齢」で測ってはいけないのか

まず大前提として、「220−年齢」はあくまで一般人口の平均的な傾向から導かれた推定式です。これはACSM(アメリカスポーツ医学会)が提唱した原始的な目安で、運動習慣のない中高年の健康管理には役立つかもしれません。しかし、トレーニングを積んだアスリートでは当て外れもいいところです。

では、なぜアスリートは年齢式から外れるのでしょうか? 最大心拍数は主に遺伝的要因と年齢によって決まるとされています。Garminの公式サイトでも「最大心拍数はフィットネスレベルの影響をほとんど受けない」と明記されており、安静時心拍数が日々変動するのとは対照的に、毎日変わらない値として扱われています(Garmin|心拍数モニタリング)。つまり、マラソンを何年やっても心臓の最大回転数が上がるわけではなく、トレーニングで鍛えられるのは「同じ心拍数でより速く走れる」心肺持久力や「安静時心拍数を下げる」副交感神経の働きなんですね。

にもかかわらず、多くのランニング記事やアプリが「220−年齢」を絶対視しているため、アスリートほど「実測値と計算値のギャップ」に悩むことになります。SNSや掲示板では、「220−年齢で計算した値とデバイスの計測値が10以上違う」という困惑の声が複数確認されています(2026年7月時点)。そのギャップに気づかずにトレーニングゾーンを設定すると、意図した強度より高すぎたり低すぎたりして、せっかくの練習が台無しになる危険性もあります。

最大心拍数の実測値がアスリートにもたらす3つのメリット

じゃあ、わざわざ苦しい思いをしてまで実測値を知るメリットって何でしょう? 最大の価値は、トレーニング強度の設定が劇的に精度向上することにあります。

一つ目は、心拍ゾーンの再定義です。例えば「有酸素ゾーン」を最大心拍数の70〜80%と設定する場合、年齢式が低めに出ていると、実際にはもっと高い強度で走れているのに“楽なゾーン”で甘やかしてしまうことになります。逆に年齢式より実測値が低いアスリートは、オーバーペースに陥りやすくなります。

二つ目は、オーバートレーニングの予防です。最大心拍数に近い領域でのインターバルトレーニングでは、1本ごとの心拍回復度が疲労のバロメーターになります。実測値をベースにすることで、自分の限界値からの相対的な負荷を正確に把握できるようになります。

三つ目は、レースペースの設計です。特にフルマラソンやハーフマラソンでは、最大心拍数に対する割合で臨むべきペースがおおよそ決まっています。実測値があれば、レース当日のコンディションに合わせた「安全な上限」を設定できます。

ただし、ここで一つ注意点。最大心拍数がトレーニングで「上がる」わけではありません。先述のGarmin公式見解にもあるように、最大心拍数はフィットネスレベルの影響を受けません。「最大心拍数を鍛えて上げる」という表現は誤りで、正確には「その最大心拍数を活用して、パフォーマンスを向上させる」というのが正しい認識です。

最大心拍数を実測する3つの方法(公式プロトコル付き)

実測する方法は大きく分けて3つあります。それぞれ難易度や精度、必要な環境が違うので、自分のレベルと目的に合ったものを選びましょう。

1. ラボテスト(医療機関でのCPX検査)

最も精度が高いのは、医療機関で行う心肺運動負荷試験(CPX)です。トレッドミルやエルゴメーターを使って漸増負荷をかけ、ガス交換分析や心電図モニタリングを行いながら限界まで追い込みます。

  • 所要時間: 数時間(準備・説明含む)
  • 難易度: 非常に高い(医師監修下で実施)
  • 精度: 最高(ゴールドスタンダード)
  • メリット: 最大心拍数だけでなく、嫌気性代謝閾値(AT)やVO2maxも同時に評価できる
  • デメリット: 費用がかかる、予約が必要、一般ランナーには敷居が高い

ラボテストが理想ですが、費用やアクセスの面で難しい場合もあるでしょう。ただ、心疾患のリスクがある方や、競技志向の高いアスリートには最も推奨される方法です。

2. トレッドミル漸増負荷テスト(COROS推奨プロトコル)

ジムなどでトレッドミルが使える環境なら、COROSが公式FAQで推奨するプロトコルを試してみてください。この方法は、速度を一定に保ったまま勾配を上げていく「ブルースプロトコル」の一種です。

COROS公式推奨の手順(要約):

  • ウォームアップをしっかり行う(軽いジョギング+ストレッチ)
  • トレッドミルの速度を自分のペース(例:10km/h)に設定し、勾配を1%からスタート
  • 2分ごとに勾配を2%ずつ上げていく
  • 心拍数が頭打ちになり、これ以上上げられないと感じるまで続ける
  • 限界に達したら、クールダウンをゆっくり行う

なお、このテストはかなりキツいです。COROS公式でも「強度が高いため補助者を同伴させること」を推奨しています。安全最優先で、体調が悪い日や疲労が溜まっている日は絶対にやらないでください。

3. フィールドテスト(トラックインターバル法)

屋外のトラックで行う方法です。特に400mトラックが使える環境におすすめで、こちらもCOROSが公式プロトコルとして紹介しています。

手順の一例:

  • 十分なウォームアップ(軽いジョギング+流し×数本)
  • スタート地点でタイムを計測しながら、400mを全力に近いペースで走る(例:1本目)
  • ジョグまたは立ち止まって完全回復するまで休息(心拍が120bpm程度まで下がるのを待つ)
  • 2本目、3本目と繰り返し、心拍数が上がらなくなったところで打ち止め

RUNNETの松村拓希コーチの記事では、フルマラソン経験者向けの具体例として、「フルマラソンペースがキロ4分のランナーなら、キロ3分12秒〜36秒のペースで3分間×3本のインターバルを実施し、その最高心拍数を最大心拍数とみなす」というメニューが紹介されています(RUNNET公開情報)。この方法はトラックでなくても、道路の1km区間などで応用可能です。

いずれの方法でも、心拍計は光学式より心拍ベルト(チェストストラップ) のほうが反応が早く正確です。手首の光学センサーはラグが生じることがあるので、実測テストのときだけでもベルト型を使うことをおすすめします。

最大心拍数実測のリアルな声:よくあるつまずきと対策

実際にユーザーからよく聞かれるのは「測り方がわからない」という不安よりも、「測ってみたけど本当にこれで合ってるの?」という疑問です。SNSや掲示板での声を要約すると、以下のような悩みが複数見られました(2026年7月時点)。

  • 「デバイスごとに表示される最大心拍数が異なる」:これは各デバイスのアルゴリズムの違いや、測ったタイミングのコンディション差が原因です。実測値を一度決めたら、その数値を各デバイスに手動入力することを推奨します。自動算出に頼り続けると、誤差が拡大します。
  • 「テストがきつすぎて最後まで持たない」:これは非常に多い声です。無理に限界まで追い込む必要はありません。一度のテストで決めようとせず、数回のハードなトレーニングセッションの中で記録された最高値を暫定的な最大心拍数として採用する「実戦的アプローチ」もあります。
  • 「測った値が年齢式より低かった」:これは意外とあります。ストレスや睡眠不足、カフェイン摂取など、当日の体調が影響している可能性が高いです。その場合は別の日に再テストするか、高強度レース(5kmや10kmのタイムトライアル)のラストスパート時の心拍数を参考にしましょう。

最大心拍数は一度測れば終わりじゃない?年齢とともに変わる話

「測ったからもう大丈夫」と思っていませんか? 最大心拍数は加齢に伴って徐々に低下することが知られています。特に40代を超えると、数年に一度は再測定を検討したほうがいいでしょう。

ただし、ここで誤解しがちなのが「年齢式で計算し直す」こと。年齢式はあくまで推定値なので、実測値をベースに考えるのが鉄則です。例えば、50歳で実測値が180bpmだった人が、55歳で再測定したら175bpmに下がっていた、というケースでは、年齢式(220−55=165)よりはるかに高い値でトレーニングを継続できることになります。

Garminの公式見解にもある通り、最大心拍数は「日によって変わる安静時心拍数」とは異なり、比較的安定的な指標です(Garmin|心拍数モニタリング)。それでも加齢の影響は受けるので、「3〜5年に一度は実測し直す」というメンテナンス感覚でいいでしょう。

最大心拍数の実測値をトレーニングに落とし込む具体策

では、せっかく実測値が手に入ったら、どう活用するのか? ここでは2つの具体的な使い方を紹介します。

1. 心拍ゾーンの再設定

まずは、自分のトレーニングアプリやデバイスに実測値を入力しましょう。多くのガーミンやCOROSのデバイスでは「ユーザープロファイル」で最大心拍数を手動設定できます。これだけで、その日表示される心拍ゾーンがガラッと変わります。

具体的なゾーン設定の目安としては、香港心臓專科中心の陳杰醫生による2024年5月の記事では、中等度〜高強度運動の目標心拍数範囲として「最大心拍数の64〜76%(中等度)」「77〜93%(高強度)」が紹介されています(香港心臓專科センター, 2024年5月)。これは一般健康管理の指標ですが、アスリートがLSD(長距離走)やペース走の強度を決める際の参考になります。

例えば、最大心拍数が190bpmのアスリートなら、有酸素性のベーストレーニングは146〜152bpm前後、閾値トレーニングは160〜175bpm前後といった具合に、数値で強度を管理できるようになります。

2. レースペースの設計

フルマラソンでは、多くの指導者が「最大心拍数の85%前後」をレースペースの上限としています。実測値がわからないと「なんとなくキロ4分で行こう」という感覚頼りになりがちですが、数値で管理すれば、向かい風やアップダウンでもペースを調整しやすくなります。

アスリートなら知っておきたい「最大心拍数」と「安静時心拍数」の関係

最後に、最大心拍数とセットで押さえておきたいのが安静時心拍数(RHR) です。両者はよく混同されますが、全く別物です。

最大心拍数は遺伝と年齢でほぼ決まる「上限値」なのに対し、安静時心拍数はトレーニングで大きく変わる「状態値」です。Garminの公式解説でも、「安静時心拍数は日々変動し、トレーニングのしすぎやストレスで上昇する」と指摘されています。

つまり、アスリートが注目すべきは「最大心拍数は変えられないが、安静時心拍数を下げることで心拍予備能(最大−安静)を広げられる」という点です。実測した最大心拍数を使って安静時心拍数をウォッチすることで、疲労蓄積のサインを早期発見できます。例えば、同じ強度のジョグなのに心拍数がいつもより10bpm高い日は、疲労が溜まっているサインです。

最大心拍数を実測するなら、これらのデバイスが頼りになる

実測をスムーズに進めるためには、信頼できる心拍計が必須です。ここでは、多くのアスリートに支持されているデバイスを紹介します。

  • Garmin
    ガーミンは心拍トレーニングのパイオニア的存在。心拍ベルト(HRM-Pro Plusなど)との連携で、リアルタイムに正確な心拍データを取得できます。最大心拍数の手動設定も簡単で、トレーニングステータス機能と合わせて使うと、オーバートレーニング予防に役立ちます。
  • COROS
    コーロスはランナーやトライアスリートに人気のブランド。特にGPSの精度とバッテリー持ちが評価されています。公式FAQで実測プロトコルを公開しているだけあって、心拍トレーニングへの思想がしっかりしています。EvoLabという疲労度分析機能も、最大心拍数をベースにしたアスリート向けの指標を提供してくれます。
  • EPSON WristableGPS
    エプソンのWristableGPSシリーズは、高精度な光学式心拍センサーとGPSを搭載し、コストパフォーマンスに優れています。最大心拍数の自動検出機能も備わっており、毎日のトレーニングで記録された最高値を参考にできます。初心者から中級者まで幅広く使える一台です。

これらのデバイスは、いずれも最大心拍数の手動入力に対応しており、実測値をしっかりトレーニングに反映できます。

まとめ:アスリートの最大心拍数は“知って終わり”ではなく“活かしてこそ”

アスリートの最大心拍数は、年齢式のような便利な“目安”では正確に測れません。実測によって初めて、自分だけの本当の上限値がわかります。そして、その値はトレーニングで上がるものではなく、加齢とともにゆっくり変わっていくものだと理解しておくことが大切です。

この記事で紹介したCOROSやRUNNETのプロトコル、あるいは医療機関でのCPX検査を参考に、ぜひ一度、安全に配慮しながら実測にチャレンジしてみてください。最初は「こんなに高いの?」「こんなに低いの?」と驚くかもしれませんが、それがあなたの本当の数値です。その数値をデバイスに設定し、心拍ゾーンやレースペースに反映させることで、これまで以上に質の高いトレーニングが可能になるはずです。

最大心拍数は“限界値”ではなく、“コントロールのための基点”です。正しく測って、賢く使いこなしましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました