ランニングを本気で楽しんでいる人ほど、数字で自分の成長を確かめたくなるものです。ペースや心拍数だけじゃなく、今の自分のコンディションはどうなのか、次のレースまでに何をすべきなのか。そんな「知りたい」に全部応えてくれるのが、Garmin Forerunner 965です。
でも正直、安い買い物じゃありません。8万円台後半という価格を見て、「本当に必要なのか」「下位モデルじゃダメなのか」と迷う人も多いはず。実際に手にして走り込んでみると、その値段の理由がはっきり見えてきました。良いところだけじゃなく、気になった点も包み隠さずお伝えします。
Forerunner 965がランニングウォッチの最上級と呼ばれる理由
Forerunnerシリーズにはいくつかのモデルがあります。965はその頂点に立つ一本。何がそんなにすごいのか、一言でいえば「全部入り」だからです。
まず目を引くのは1.4インチの有機ELディスプレイ。これがとにかく美しい。454×454ピクセルの高解像度で、地図の細かい道までくっきり見えます。走りながらチラッと見るだけでも情報がスッと入ってくる感覚は、従来のMIP液晶とは別次元です。
しかも、Garmin Fenix 7シリーズのような重さはなく、たったの53g。チタニウムベゼルのおかげで軽さと高級感を両立しています。ランニング専用機としてここまで振り切ったモデルは、ガーミンのラインナップでも965だけです。
さらに、内蔵地図、マルチバンドGPS、Garmin Pay、音楽保存用の32GBストレージと、トライアスロンやトレイルランニングまでカバーできる万能さを持っています。まさに「これさえあれば何もいらない」一本です。
有機ELディスプレイは本当に屋外で見やすいのか
有機EL搭載と聞いて、多くの人が心配するのが「直射日光の下で見えるの?」という点です。結論から言えば、まったく問題ありません。
実は965のディスプレイは、単なる有機ELではなく反射防止加工が施されています。強い日差しの中でも、地図の等高線まではっきり識別できました。自動輝度調整も優秀で、暗い時間帯に眩しすぎることもない。常時表示をオンにしても、視認性のストレスは一切感じませんでした。
もちろん、常時表示にするとバッテリー消費は増えます。公式の23日間(スマートウォッチモード)という数字は、常時表示オフでの計測。常時表示をオンにして週3〜4回ランニングすると、実質10日〜14日程度で充電が必要になるイメージです。それでも、Apple Watchと比べれば圧倒的に長持ち。GPSモード約31時間というスタミナも、ウルトラマラソンに挑戦する人には心強いでしょう。
気になる画面焼けについては、ガーミンがピクセルシフトなどの対策を施していると明言しています。長期使用レポートを見ても、大きなトラブルは報告されていません。過度に心配する必要はなさそうです。
Forerunner 265と965、どちらを買うべきか
Garmin Forerunner 265と965の価格差は2万円以上。ここが一番悩ましいポイントですよね。両者の違いは「地図」と「素材」と「マルチスポーツ対応力」に集約されます。
265にも美しい有機ELは搭載されていますが、内蔵地図がありません。パンくずナビ(あらかじめ設定したルートを線で追う機能)は使えますが、分岐点で迷ったり、予定外の道を走りたくなったとき、やはり地図がないと困る場面は出てきます。知らない土地でのランニングを楽しみたい人、トレイルランに挑戦する人は、965一択です。
ベゼル素材も265は強化プラスチック。965のチタニウムに比べると、普段使いの上品さでは一歩譲ります。ランニング以外の時間も身につけておきたいなら、この差は意外と大きいですよ。
そして、バイクのパワーメーター連携やゴルフ機能も965だけの特権。トライアスリートやマルチスポーツ派なら、265では機能不足を感じるはずです。「とにかく軽くて綺麗で、走れれば十分」というランナーには265がベストバイですが、それ以外の「何か」を求めるなら965を選んで後悔はしません。
トレーニングレディネスは本当に役立つのか
965は「記録する」から「教えてくれる」に進化したウォッチです。象徴的な機能がトレーニングレディネス。睡眠、HRVステータス、回復時間、ストレスレベルなどを総合して「今日の体は何点です」とスコアで示してくれます。
最初は「ふーん、数字が出たな」くらいの印象でした。でも2週間ほど追いかけていると、感覚とスコアが驚くほど一致してくるんです。「昨日飲みすぎたな」という朝はスコアが低い。「今日は体が軽い」と感じる日はスコアが高い。自分の主観をデータが裏付けてくれる安心感がありました。
さらに実用的なのが、トレーニングレディネスが低いときに提案されるメニューです。「今日は回復走を40分」とか「休息を推奨します」といった具合に、無理を防いでくれます。練習熱心な人ほどオーバートレーニングに陥りがちですから、このストッパー役はとてもありがたい存在です。
持久力スコアやヒルスコアといった指標も面白い。単なるVO2 Maxとは別の切り口で「長く走れる力」「坂を登る力」を伸ばせているか、可視化されます。数値を伸ばしたくて、つい坂道インターバルを増やしてしまいました。モチベーションを焚きつける仕掛けとしてよくできています。
普段使いと睡眠計測、47mmケースの実際の装着感
47mmというケースサイズを聞くと「大きすぎない?」と不安になる人もいるでしょう。私の手首は標準的な男性サイズよりやや細めですが、違和感はありませんでした。というのも、965の薄さと軽さがサイズ感をかなり中和してくれるからです。厚さは13.2mm。就寝中に装着していても、枕に手を置いたときに邪魔になる感じはほとんどありませんでした。
睡眠計測の精度も優秀で、深い睡眠・浅い睡眠・レム睡眠の内訳に加え、睡眠スコアで質を評価してくれます。このデータが翌朝のトレーニングレディネスにも反映されるので、自然と「早く寝よう」という意識が芽生えます。ガジェットが生活習慣を改善してくれる好例です。
バンドはクイックリリース式で、付け替えも簡単。フォーマルな場には少しスポーティすぎるかもしれませんが、ビジネスカジュアル程度ならチタンベゼルのおかげで意外と馴染みます。
トライアスロン・マルチスポーツでの実力
965の本領は、やはり複数競技をまたぐ場面で発揮されます。スイム、バイク、ランの切り替えはもちろんスムーズ。オープンウォータースイムでもマルチバンドGPSがしっかり軌跡を捉えます。
バイクではGarmin Vector 3などのパワーメーターと連携。データフィールドのカスタマイズ性が高いので、FTPやパワーゾーンを見やすい位置に配置できるのが嬉しいところ。ガーミンのサイコンと遜色ない情報量を、手首で完結させられます。
ランへのトランジションもワンタップ。トータルのタイムだけでなく、スイムからバイク、バイクからランへの移行時間まで計測してくれるので、レース後の振り返りが捗ります。トライアスロンをこれから始める人はもちろん、すでにGarmin Forerunner 955やFenixシリーズを使っているベテランが「軽さ」を求めて965に乗り換えるケースも納得です。
音楽機能とGarmin Pay、地図の実用度
スマホを持たずに走れる喜びは、一度味わうと手放せません。965は32GBのストレージを内蔵し、SpotifyやAmazon Musicのプレイリストをオフライン保存できます。ワイヤレスイヤホンとのペアリングも安定していて、都内の混雑したエリアでも音切れはほぼありませんでした。
ただし、プレイリストのダウンロードにはやや時間がかかります。Wi-Fi経由とはいえ、100曲程度の転送に数十分は見ておいた方がいい。外でさっと追加する用途には向かないので、事前準備が前提です。
Garmin PayはSuicaには非対応ですが、VisaやMastercardのタッチ決済が使えるコンビニや自販機ならウォッチだけで支払いが完了。長距離ランの補給で立ち寄ったコンビニでもたつきたくない場面で重宝します。
内蔵地図は、ランニング中に操作してももっさり感がなく快適。分岐点での拡大表示や、あらかじめ作成したコースからの逸脱警告も正確です。旅先でのジョギングが何倍も楽しくなりますよ。
Forerunner 965を使って気になった点と正直なところ
良いところばかりではフェアじゃないので、気になった点もお伝えします。
まず価格。88,000円(税込)は、ランニングウォッチとしてやはり高額です。この価格帯になると、Fenix 7の中古やGarmin Epix Proのセール品と競合します。「山よりもランがメイン」と明確に割り切れない人は、そちらも視野に入れるといいでしょう。
次に心拍計の精度。手首式なので、気温が低い冬場やインターバル走のような急激な心拍変動にはどうしてもタイムラグが生じます。本気でデータを取るなら、Garmin HRM-Pro Plusのような胸ベルト型心拍計の併用をおすすめします。ECG(心電図)アプリには対応していない点も、健康管理目的でウォッチを探している人は知っておいてください。
あとは慣れの問題ですが、機能が多すぎてメニュー構造を覚えるまでに少し時間がかかります。スマホアプリのGarmin Connectと合わせて、最初の1週間は「お、こんな機能もあったのか」の連続でした。それも含めて所有する楽しさではあるのですが、シンプルさを求める人にはオーバースペックかもしれません。
あなたにとってForerunner 965が最適解かどうか
結局のところ、965は「ランニングを中心に据えつつ、すべてを一台で済ませたい人」のためのウォッチです。
トレイルも行くし、トライアスロンもやる。日常のヘルスケアもトラッキングしたいし、ちょっとしたお出かけにも着けていける上質さが欲しい。そんな欲張りな願いを叶えてくれるのがGarmin Forerunner 965です。
逆に、舗装路を気持ちよく走れれば十分で、価格を抑えたい人は265。登山やキャンプなどアウトドア全般でガシガシ使いたい人はFenix 7。普段使いのスマートウォッチとしての側面を重視するならApple Watch Ultra。それぞれにベストな選択肢があります。
ただ、ランニングのパートナーとして「これ以上はない」と言える一本を探しているなら、ガーミン Forerunner 965は間違いなく最終候補になります。数字と対話しながら走るのが好きなランナーほど、その真価を実感できるウォッチです。

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