「睡眠中の呼吸数」って、スマートウォッチで測れるけど、この数字が正常なのかどうか、不安に思ったことはありませんか?
結論から言います。成人の睡眠中の呼吸数は、1分間に12〜20回が目安です。でも、ちょっと待ってください。大事なのは「数字」だけじゃないんです。じつは呼吸のパターンやタイミングのほうが、もっと重要なサインを教えてくれることがあります。
この記事では、正常値の見方はもちろん、「息の仕方」からわかる危険なサイン、そして医療機関に行くべきタイミングまで、くわしく解説していきます。
睡眠中の呼吸数の正常値とは? 年齢別の目安をチェック
まずは基本。睡眠中の呼吸数の正常値を見ていきましょう。
12歳以上の成人(〜59歳)の場合、睡眠時の呼吸数は1分間に12〜20回が正常範囲とされています(Oura Ring公式ブログ、2023年)。この数値は、厚生労働省の医療施設調査などでも基準として使われている一般的な目安です。
ただし、年齢によって大きく変わります。小さな子どもほど呼吸数は多いんです。
| 年齢層 | 睡眠時呼吸数(回/分) |
|---|---|
| 出生〜6ヶ月 | 30〜60 |
| 6ヶ月〜1歳 | 30〜50 |
| 1〜3歳 | 24〜40 |
| 3〜5歳 | 22〜34 |
| 5〜12歳 | 16〜30 |
| 12歳以上〜59歳 | 12〜20 |
| 60歳以上 | 12〜22(健康状態により変動) |
(出典:Oura Ring公式ブログ「呼吸率とは」、2023年/年齢別基準は医療一般資料より)
高齢者の場合、12〜22回程度まで許容範囲が広がる傾向があります。とはいえ、「20回を超えていれば即アウト」というわけではなく、個人差や測定タイミングによる変動も大きい点には注意が必要です。
なぜ睡眠中は呼吸数が変わるのか? 3つのメカニズム
「寝てると呼吸が浅くなる気がする」——それ、正しい感覚です。
睡眠中に呼吸数が変わる理由は、脳と体の働きがガラッと切り替わるから。いくつかのメカニズムが関わっています。
① 呼吸中枢の活動が「自動運転」に変わる
起きているあいだ、私たちは意識的に呼吸をコントロールできます。でも寝ているあいだは、大脳皮質の支配が弱まり、血液中の二酸化炭素(CO₂)や酸素の濃度に応じて自動的に呼吸を調整する「化学受容体」頼みの状態になります。その結果、CO₂が多少増えても「まだ大丈夫」という反応になり、換気応答が鈍化。呼吸数や呼吸の深さが減るんです。
② のど周りの筋肉がゆるむ(特にレム睡眠で顕著)
睡眠中は全身の筋肉の緊張が下がりますが、特にレム睡眠ではのどや喉頭の開大筋の緊張が大きく低下します。すると気道が狭くなり、呼吸しにくくなる。すると体は「浅くて速い呼吸」で補おうとする。これが呼吸数の変動につながります。
③ 横隔膜の働きが変わる
腹式呼吸の主役である横隔膜。その働きは睡眠のステージによって変わることが知られています。
ある研究(NIH/PMC460068、1985年)では、健常成人男性を対象に覚醒時・徐波睡眠(深い睡眠)・レム睡眠で呼吸を比較。分時換気量(1分間に吸ったり吐いたりする空気の総量)は、覚醒時6.3L/分→深い睡眠で5.7L/分→レム睡眠で5.4L/分と有意に低下しました。横隔膜の貢献度も、覚醒時54%だったのが深い睡眠では38%にまでダウンしています。
つまり、深い睡眠では「胸式呼吸」がメインになり、1回あたりの空気の取り込み量が減る。これも呼吸数に影響を与える要因です。
ここが盲点! 実は「数値」より大事な「呼吸パターン」
多くの記事が「正常値は12〜20回」とだけ伝えていますが、じつは数値が正常範囲内でも、呼吸の仕方に異常があれば要注意です。
SNSやQ&Aサイトではこんな声が多数見られました(2026年7月現在)。
- 「呼吸数の数値は正常なのに、なんだか不安」
- 「デバイスで測った値が正常範囲なのに、いびきがひどくて眠りが浅い気がする」
- 「FitbitとApple Watchで数値が違う。どっちを信じればいいの?」
特に「数値は正常だけど、呼吸が途切れている気がする」「寝ているあいだに突然息が速くなることがある」という不安は、多くのユーザーが抱えながらも、一般記事ではほとんど扱われていません。
実際、睡眠中の呼吸では以下のようなパターン異常が起こりえます。
- 周期性呼吸:呼吸が浅くなったり深くなったりを繰り返す
- 無呼吸後の過呼吸:呼吸が止まったあと、急に大きく速い呼吸になる
- レム睡眠中の一過性の急上昇:突然呼吸数が跳ね上がる
後者の「レム睡眠中の一過性急上昇」は、研究でも確認されています。日本生理学会の大会発表(2006年)では、健常ボランティアのレム睡眠中に最大116回/分まで呼吸数が急上昇するケースが観察されました。このような現象は深い睡眠では見られず、レム睡眠特有のものと考えられています。
つまり、たまに呼吸が速くなるのは「異常」ではなく「レム睡眠の特徴」 である可能性も。とはいえ、頻度が高かったり、息苦しさを伴う場合は別のサインかもしれません。
夜間に呼吸が苦しくなる4つの病気と見分け方
ここからは少し真面目な話。睡眠中の呼吸数や呼吸パターンの乱れが、どんな病気と関係しているのかを整理しておきましょう。
国立精神・神経医療研究センターの公式ページ(ncnp.go.jp)では、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や中枢性睡眠時無呼吸症候群について、「繰り返す激しいいびき」「睡眠中の呼吸停止」「日中の過度な眠気」を受診すべき症状として挙げています。
でも、呼吸が乱れる理由はSASだけじゃありません。日本呼吸器学会の見解などをもとに、夜間に呼吸が苦しくなる主な4疾患の特徴を比較してみました。
| 疾患 | 夜間呼吸困難の特徴 | 主な随伴症状 | 受診すべき診療科 |
|---|---|---|---|
| 気管支喘息 | 夜間〜早朝に出現しやすい。副交感神経が優位になる時間帯に発作が起きやすい | せき、たん、ゼーゼー(喘鳴)、発作性の呼吸困難 | 呼吸器内科 |
| COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 夜間(特にレム睡眠)に低酸素が悪化。たんがからんで排出しにくい | 慢性のせき・たん、労作時の息切れ、長期の喫煙歴 | 呼吸器内科 |
| 心不全 | 就寝後に出現し、座位で楽になるのが特徴(肺に血液がたまるため) | 下肢のむくみ、動悸、体重増加(体液貯留) | 循環器内科 |
| 閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA) | 睡眠中に何度も呼吸が止まる(10秒以上)。窒息感で目が覚めることも | 大きないびき、日中の強烈な眠気、起床時の頭痛 | 睡眠外来/呼吸器内科 |
(出典:国立精神・神経医療研究センター公式サイト/各専門学会の一般向け解説をもとに作成)
ここで大事なのは、「呼吸数が正常かどうか」だけで病気の有無を判断しないこと。たとえばCOPDや心不全では、呼吸数がさほど増えていなくても、呼吸の仕方や随伴症状に特徴が出ることがあります。
高齢者の睡眠時呼吸数に注意すべき理由
「親の睡眠中の呼吸が気になる」——そんな声も多く聞かれます。
高齢者の場合、呼吸数だけでは判断が難しい面があります。というのも、加齢にともなって呼吸調節機能そのものが変化するから。
ある研究(PubMed/7252072、1981年)では、平均年齢74歳の高齢者(女性22名・男性18名)を対象に睡眠時呼吸障害を評価。睡眠1時間あたり5回以上の呼吸障害(無呼吸・低呼吸)が見られたのは、女性で31.8%、男性で44.4%という結果が出ています。特に女性では80歳代で顕著な増加が見られました。
つまり、高齢者の場合、「軽度の呼吸障害」は決して珍しくない。でも「珍しくない=放っておいていい」わけではありません。日中の強い眠気や転倒リスクの増加とも関係するため、気になる場合は一度相談するのが安心です。
受診のタイミング:医療機関に行くべきサイン
では、どんなときに医療機関を受診すればいいのでしょうか。
国立精神・神経医療研究センターの公式情報をもとに、以下のサインが当てはまる場合は一度かかりつけ医や睡眠外来に相談することをおすすめします。
- 家族やパートナーから「寝てるあいだに呼吸が止まる」と言われた
- いびきが非常に大きく、毎晩続いている
- 昼間にどうしても耐えられない眠気がある(運転中や仕事中にウトウトする)
- 目が覚めたときに激しい頭痛がある
- 夜中に息苦しさで目が覚めることがある(トイレ以外の理由で起きる)
これらのサインは、単なる「呼吸数の異常」よりもはるかに具体的な行動の目安になります。
また、ウェアラブルデバイスの数値だけで判断するのは禁物。デバイスによって測定アルゴリズムが異なるため、「値が少し高いから病気」とは言い切れません。あくまでも「体調変化に気づくきっかけ」として活用するのが賢い使い方です。
睡眠中の呼吸数をもっと知るために:おすすめアイテム
自分の睡眠時の呼吸数をより詳しく知りたい方や、パートナーのいびきや呼吸が気になる方には、以下のようなアイテムが役立ちます。
睡眠ステージや呼吸数、心拍数の変動を総合的にトラッキングできるスマートウォッチ。アプリ上で「正常範囲」との比較表示があり、数値の見方が初心者にもわかりやすいのが特徴です。正常値を知りたいという目的に最もストレートに応えてくれます。
「呼吸数」も含む多項目の健康データをiPhoneのヘルスケアアプリで一元管理できます。異常値が検出されたときの通知機能もあり、「気づき」を得るための入門機として人気です。
指先で睡眠中の呼吸数や心拍変動(HRV)を測定するリング型デバイス。睡眠の質を総合スコアで可視化してくれるので、「呼吸数ってなんだかよくわからない」という方にも直感的に理解しやすいです。2023年以降もアプリの解説が継続的に更新されています。
就寝中の酸素飽和度(SpO₂)を測る小型機器。呼吸数と合わせて「体に十分な酸素が行き渡っているか」を確認できます。在宅医療でも使われる信頼性の高い測定方法で、医療機関を受診する前に自宅でデータを取っておくのにも便利です。
まとめ:「数字」と「体の声」、両方を大切に
睡眠中の呼吸数は、健康の「入り口」にすぎません。
成人の目安は12〜20回/分。でもそれより大事なのは、呼吸のリズムが一定か、止まることはないか、昼間の眠気が強すぎないかという“体の声”です。
もしこの記事を読んで「ちょっと自分(や家族)の呼吸、気になるな」と思ったら、ぜひ一度データを取ってみてください。そして、複数のサインが重なるようなら、ためらわずに医療機関へ。呼吸のことをもっと知ることが、質のいい睡眠への第一歩です。

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